パキスタンの8000メートル峰ナンガパルバット に一人で出かけたとき、7500メートルで雪洞を掘り、一晚その中で明かしたことがあった。日中の気温がプラス20度、夜间の気温がマイナス40度という気温の较差 の中での登山は体に过酷なものだ。マイナス20度からマイナス40度への気温の低下は温度差は20度だが、プラス20度からマイナス40度というのは、温度差が60度にもなる。
日中、汗ばんだ肌着はすべて冻り付き、小さな火の気のない雪洞の中では、羽毛服の上下を着ていても、素肌でいるような感じがする。目をつむれば、まぶたの奥から白い帯状のようなものがゆらめき引き抜かれていく。あたかも魂を引き抜かれていくように気が远くなっていく。必死で自分を取り戻す。眠ることが死ぬことだということを初めて体験した夜、足踏みをし、自分を叱咤しながら朝を待った。夜は永远に明けないのではないかと思えるほど长い长い一夜だった。
吹雪の谷川岳に登り、视界がほとんど利かない中でも、トレース を见极める能力が身に付き、平然として吹雪の中を歩けるようになると、吹雪の日もまた楽しくなる。そして、过酷な経験を乗り切れば乗り切るほど、自然がより身近なものに感じられるようになる。